アール香澄町は攻撃特化型収益物件である

仙台市太白区八木山香澄町の収益物件(売店舗・居室)についてレビューさせていただきます。

名称アール香澄町
所在仙台市太白区八木山香澄町25-3
交通仙台市地下鉄東西線「八木山動物公園駅」徒歩21分
仙台市バス「八木山松波町」徒歩3分
価格1190万円(税込)
土地面積66平米
建物面積83.64平米(登記簿による)
築年月1973年9月
構造軽量鉄骨造2階建
表面利回り12.95平米

収入

物件の特徴は何と言ってもその収益性です。

狭小地の築年数が経過した物件ということもあり、スペック的には収益性に全フリした物件と言っても過言ではないでしょう。

区画状態賃料
1階店舗入居中71,500円(税込)
1階倉庫22,000円(税込)
2F居室入居中35,000円(非課税)
賃料合計128,500円(満室想定)106,500円(現況)

1階東側に貸倉庫区画がありますが、現在は空いています。

経費

対して経費は共用設備がほとんどないので少なめです。

固定資産税等以外では現在は賃貸管理費が掛かっていますが、管理会社の承継条件はありませんので、自分で管理すれば無料です。

  • 固定資産税&都市計画税:年額38,000円(令和7年度)
  • 賃貸管理料:月額税抜賃料総額の5.5%(税込)

シミュレーション

購入時の総投資額や、その後の収支をシミュレーションしてみました。

【シミュレーション条件】

  • 各部屋の入居率は弱含みですべて80%稼働(20%の期間は空室予測)
  • 経費は上記以外に、火災保険料と修繕費を概算で計上しています
  • 所得税(法人税)、消費税納税は加味していません
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稼働率を80%とし、上記経費を加味すると、毎年のキャッシュフローは100万円程度で、総投資額に対する利回りは8.3%、12年で投資額を回収できる計算になります。12年以降には無償譲渡しても、それ以前にある程度の価格で売却すれば利益は出るということです。

ただし、問題はそれが本当に現実的かどうかです。

八木山香澄町の注意点

収益性に全フリしているということは、逆に言えばそれ以外の部分で注意を要する部分があるということです。

築年数や立地

物件は新築から50年以上経過しています。

軽量鉄骨造の法定耐用年数はすでに経過済みです。

建物はこれまで室内外の修繕が度々なされてきたようですが(前所有者の保有期間のため詳細は不明)、今後もメンテナンスは欠かせないでしょう。

また、立地は向山から八木山動物公園に至る主要道路沿いで交通量は多く、視認性のいいアウトカーブ(カーブの外側)なので店舗には向いていますが、敷地内に駐車場はありません。

居室についてもかなりリフォームされており、地下鉄東西線「八木山動物公園」駅から歩くことはできますが、入居者からの需要が高い物件とまでは言えないでしょう。

周辺施設COOP MIYAGI八木山店 1,805m
ファミリーマート八木山香澄町店 197m
私立東北工業大学 648m
私立仙台城南高校 351m
仙台八木山香澄町郵便局 270m

土地

土地は66平米(19.96坪)と狭小地というだけではなく、南西側の道路面と物件敷地はほとんどフラットなのに対し、北東側の道路面とは高低差があり、間知ブロックと鉄骨の支柱で建物が支えられています。

仮に将来的に解体して建て替えるとなると、同じように支柱で支えたり、擁壁を組み替えたりするにしてもそれなりに費用が掛かりますし、そうではなく法面部分には建物を建てないとすると建物が小さくなります。

また、再建築となると現在の建物を解体する必要がありますが、敷地にぎっちり建てられているので作業が大変で、解体費用が割高になると思われます。

以上のことから再建築にはハンデキャップがあると率直に申し上げます。

遵法性

さらに法的な部分、相隣関係においてもお伝えしなければならないことがあります。

  • 物件建物は完了検査を受けておらず検査済証はありません(建築確認は取得しています)
  • 1F倉庫部分はあきらかに増築と思われますが、増築時に建築確認を受ける必要があるかもしれませんが、詳細は不明です
  • 隣接地の下水管の一部が物件敷地に入りこんでいます

こういった部分の弱さが、物件を攻撃力特化型と称する所以です。

まとめ

ジャンキーな香りがする物件であることは確かで、無難な物件で不動産投資を始めようとする方にはオススメできません。

ただし、より具体的に運営を検討してみると、今後の運営が全く無理筋とは言えないと思います。

通常、不動産投資の場合、建物の価値が年々下がるので、将来は購入した価格よりも低い価格でしか売れないと想定して、その分を含めてインカムゲインで収益を上げなければなりません。しかし、近年の相場上昇で建物価値減少分も含めてインカムゲインで収益を上げることは難しくなっていて、将来の土地価格上昇を織り込んでの投資だったり、そもそも積極的な利殖目的ではなく、インフレや相続税、固定資産税対策が主目的になっていたりします。

その点、物件はすでに建物は完全に法定耐用年数を過ぎていて、これ以上の建物価値の下落はありません。ある意味、「無敵」です。遵法性とかあまり関係ないレベルです。

しかも、メイン収益源が店舗の賃料なので、借り手側は立地や賃料等で出店先を選定し、築年数はあまり考慮しません。もちろん現在の借り手がずっと継続してくれるのが一番ですが、最悪、退去となっても、物件には今後もそれなりの賃貸ニーズが継続すると思われます。

そして、築古による不具合リスクが気になると思いますが、今後、特に劣化が心配な給排水については、北側からの物件写真を見ての通り、配管等は割と外部に露出していて”メンテナンスフリー”状態です(隠れている配管等もあるかもしれませんが)。

雨漏れも懸念されますが、外装の修繕は実施してそんなに年数が経っていないように見受けられます。

将来の出口戦略は解体して土地で売るとは考えずに、メンテナンスをして使い続けると思えば、実はことさらハイリスクだったり、非現実的だったりはしないように思います。メンテナンスを適切にし続ければほとんどの建物はずっと使えます。

安全安心で資産価値の高い物件ではありませんが、しっかりメンテナンスして、入居者との巡り合いがあれば、十分に利益を出しうる物件と思います。

2F居室
2F居室
2F居室
2F居室

【物件概要】
■構造:軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺2階建 ■用途地域:第二種住居地域 ■建ぺい率:60% ■容積率:200% ■土地権利:所有権 ■地目:宅地 ■接道状況 南西側:幅員約9m公道、北東側:幅員約5m公道に接す ■築年月:1973年9月 ■設備:上水道・下水道・LPG ■取引態様:一般媒介​